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遠赤外線ヒータ-のメリット・デメリットを解説!コストや選び方も紹介
工業用遠赤外線ヒーターの導入を検討しているものの、デメリットや運用コストが気になっていませんか?
確かに、発熱時間や加熱範囲の制限、電気代など、導入前に確認すべき課題は少なくありません。
しかし、適切な用途と使用方法を理解すれば、遠赤外線ヒーターは効率的な加熱ソリューションとなります。
本記事では、遠赤外線ヒーターの基礎知識から具体的なデメリット、ランニングコストまで、製造現場で本当に必要な情報を詳しく解説していきます。
工業用加熱装置の選定でお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
遠赤外線ヒーターの選定や導入をご検討の際は、40年以上の実績を持つ株式会社OKAMOTOにご相談ください。
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【前提知識】遠赤外線ヒータ-をおさらい
はじめに遠赤外線ヒーターについて解説します。
- 遠赤外線ヒータ-とは?
- 遠赤外線ヒータ-の種類
- 近赤外線との違い
詳しく解説していきます。
1.遠赤外線ヒータ-とは?
工業用遠赤外線ヒーターは、電磁波の形で熱エネルギーを直接被加熱物に伝達する放射加熱方式の熱源です。
波長3μm~1000μmの遠赤外線を利用し、効率的な加熱を実現する産業用加熱装置として広く活用されています。
工業用遠赤外線ヒーターの特徴は、高い伝熱効率と制御性にあります。
赤外線は空気には吸収されずに透過し、被加熱物に直接到達するためエネルギーロスが少なくなります。
2.遠赤外線ヒータ-の種類
工業用遠赤外線ヒーターは、おもに以下の3種類です。
- セラミックヒーター
- シーズヒーター
- カーボンヒーター
それぞれの特性に応じて最適な用途で使用されています。
遠赤外線ヒーター |
特徴 |
セラミックヒーター |
・熱効率の高いセラミック素材を発熱体として使用し、面状の加熱が可能 ・面状のワーク加熱に適しており、熱電対を内蔵できることから温度のゾーンコントロールにも対応可能 ・立ち上がり時間は6-8分程度 ・300-700℃の温度域で安定した加熱性能 |
シーズヒーター |
・ニクロム線を金属管(シース)で覆った構造を持ち、遠赤外線の放射量が最も多い・耐久性に優れ、2万〜3万時間という長寿命 ・最大エネルギー密度:30kW/m² ・500-700℃の温度域で安定した加熱が可能 |
カーボンヒーター |
・炭素繊維を発熱体として使用し、速暖性と高い放射効率 ・立ち上がり時間短い ・950-1450℃の高温域まで対応可能 ・最大エネルギー密度:100-150kW/m² ・急速加熱が必要な工程に最適 |
遠赤外線ヒーターは、被加熱物の材質や加熱温度・処理時間などの要件に応じて選びましょう。
3.近赤外線との違い
遠赤外線ヒーターと近赤外線ヒーターは、波長特性の違いにより、異なる加熱特性と用途適性を持っています。
種類 |
特徴と使用用途 |
遠赤外線 |
・物質表面での吸収率が高く、均一な加熱が必要な工程に適している ・カラー印刷や樹脂加工など、色による吸収率の差が少ない用途向き |
近赤外線 |
・高温・急速加熱が必要な工程に適している ・金属への熱吸収率が高く、塗装の下地金属の加熱などに効果的 |
近赤外線ヒーターは電気からのエネルギー変換効率が約90%と高く、立ち上がり時間が約1秒と速いのが特徴。
一方で遠赤外線ヒーターは、変換効率が60-70%とやや低いものの、物質への熱吸収率が高く、より効率的な加熱が可能なのが特徴です。
遠赤外線ヒータ-のメリット
遠赤外線ヒーターのメリットを理解しておきましょう。
- 耐久性が優れている
- 成形性が優れている
- 放射特性が優れている
詳しく解説していきます。
1.耐久性が優れている
遠赤外線ヒーターは産業用途において卓越した耐久性を誇り、過酷な使用環境下でも安定した性能を発揮する信頼性の高い加熱装置です。
遠赤外線ヒーターの耐久性は、以下の要素から成り立っています。
- 最高850℃までの高温耐熱性を実現
- 化学薬品に対する優れた耐性
- 24時間365日の連続運転に対応
とくにシーズヒーターは、ニクロム線を硬い金属のパイプで覆った堅牢な構造により、長期間の使用に耐える設計となっています。
またセラミックコーティングを施すことで、さらなる耐久性の向上も可能になりました。
2.成形性が優れている
遠赤外線ヒーターは、優れた成形性を持ち合わせています。
さまざまな産業用途に対応可能な設計性を備えているからです。
たとえば、遠赤外線ヒーターは、以下のような様々な形状に対応可能です。
- ストレートタイプ
- U字型・M字型
- 渦巻型
- パネル型
- 薄型スペースタイプ
パネル型クリーンヒーターは、炉内の温度分布を考慮した設置が可能で、温度分布の均一化ができます。
また、精密機器の収容箱や設置スペースに制限がある場合でも、薄型スペースヒーターを使用することで柔軟な対応が可能です。
遠赤外線ヒーターの優れた成形性により、効率的で高品質な製品製造につながっています。
3.放射特性が優れている
遠赤外線ヒーターは、優れた放射特性により効率的で均一な加熱ができます。
放射特性とは、物質が電磁波の形で放射するエネルギーの特徴を表す性質です。
放射特性が高いヒーターは、赤外線の放射エネルギーが大きく効率的な加熱が可能です。
これにより加熱対象物への熱吸収率が高まり、昇温速度が速くなります。
一方で放射特性が低いヒーターでは、加熱効率が低下します。
優れた放射特性により、遠赤外線ヒーターは製造過程での効率化と品質向上に貢献します。
とくに、プラスチックや塗料の乾燥工程において高い性能を発揮するでしょう。
遠赤外線ヒータ-のデメリット
遠赤外線ヒーターにはデメリットも存在します。
導入前に理解しておきましょう。
- 発熱に時間がかかる
- 広範囲の加熱に不向き
詳しく解説していきます。
1.発熱に時間がかかる
遠赤外線ヒーターの主要なデメリットの一つは、発熱に時間がかかることです。
遠赤外線ヒーターは300℃-700℃の比較的低温域で動作し、波長3μm~1000μmの遠赤外線を放射します。
この低温動作特性により、熱エネルギーの変換効率は60-70%程度に留まり低くなりやすいです。
発熱に時間がかかる遠赤外線ヒーターですが、以下の対応策を行うことでデメリットが解消されやすくなります。
- 予熱運転の実施による立ち上げ時間の短縮
- 複数のヒーターを組み合わせたゾーン制御の採用
- 加熱工程の最適化による待機時間の有効活用
遠赤外線ヒーターは一度温度が安定すると、安定した温度で加熱が可能です。
遠赤外線ヒーターの特徴を捉えて上手に運用していきましょう。
2.広範囲の加熱に不向き
遠赤外線ヒーターは、局所的な加熱には優れていますが、広範囲の均一加熱には不向きという特性があります。
以下のような使用方法が最適です。
- 小さな部分を正確に温める必要がある場合
- 物の表面をしっかり温めたい場合
- 決められた範囲を一定の温度で温める必要がある場合
たとえば、スマートフォンの部品を組み立てる時や、精密機器の一部分だけを加熱する必要がある時。
またプラスチック製品の表面を加工する時や、塗装を乾燥させる時など、表面を均一に加熱する必要がある作業に向いています。
つまり、遠赤外線ヒーターは「広い範囲を一度に温める」よりも、「決められた場所を正確に温める」のが得意な加熱装置です。
遠赤外線ヒータ-のランニングコスト
遠赤外線ヒーターのランニングコストは、主に電気代によって決定され、機種や使用条件によって大きく異なります。
たとえば、1日5時間で30日間使用した場合の月間電気代は、以下のように使用条件によって変動します。
- 低出力(400W)の場合:約3,000円程度
- 高出力(1200W)の場合:約8,000円以上
また、ランニングコストを抑える方法は以下のとおりです。
- 適切な温度設定にする
- 必要な場所だけを温める
遠赤外線ヒーターのランニングコストは使用方法によって大きく変動するため、用途に応じた適切な機種選定と運用管理が重要となります。
遠赤外線ヒータ-の選び方
遠赤外線ヒーターの選び方は以下の3つのポイントを押さえておきましょう。
- 加熱対象物
- 温度と加熱時間
- 設置環境への配慮
加熱対象物の材質や形状によって最適なヒーターが異なります。
平面状の製品を加熱する場合はパネル型クリーンヒーターが適しており、複雑な形状の製品の場合はストレートヒーターを反射板と組み合わせて使用すると効果的です。
また、加熱温度と必要な立ち上がり時間も重要な選定基準です。
セラミックヒーターは6-8分、石英ヒーターは3-4分の立ち上がり時間が必要で、使用温度域は300-700℃程度です。
設置スペースや電源環境も考慮が必要です。
精密機器の収容箱など設置場所に制限がある場合は、薄型スペースヒーターが適しています。
遠赤外線ヒータ-に関するご相談は株式会社OKAMOTOへ
工業用遠赤外線ヒーターは、その優れた放射特性と耐久性から、産業用加熱装置として広く活用されています。
しかし、発熱に時間がかかることや広範囲の加熱に不向きといったデメリットもあり、用途に応じた適切な選定が重要です。
本記事で解説した通り、遠赤外線ヒーターの効果的な活用には以下の点が重要となります。
- 加熱対象物の特性に合わせた機種選定
- 使用環境を考慮した設置方法の検討
- ランニングコストを考慮した運用計画
これらの要素を総合的に判断し、最適な遠赤外線ヒーターを選定することで、製造プロセスの効率化と品質向上を実現できます。
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